Kです。
昔、学生時代の友人で話し言葉の語尾に
「〜やろ」
「〜っちゃろ」
「〜するけんがー」
が頻繁につく人がいました。
新入生として入学してからの1か月たらずで知り合いまして、まだお互いの素性がよくわからず、その方言的ニュアンスからてっきり彼は九州方面の出身だと思っていました。しかし、しばらくして実は生粋の千葉生まれ千葉育ちということが判明。北は群馬、西は大阪までしか行ったことがないとの証言。
どうやら学生寮の同室が九州出身者で、比較的フラットな「標準語」に非常に濃厚な「九州」ニュアンスが伝染してしまった模様。たかだか数週間で。
久しぶりに実家に帰った時に、親兄弟から非常に気持ち悪がられたそうです。
しばらくして彼は寮を出て一人暮らしをはじめ、福島出身の彼女と半同棲状態になり、久しぶりに会った時には見事な東北系フレーバーの話言葉に変貌しておりました。
そんなこと、ない??
これを「ニュアンス伝染」といいます。
僕いわく。
水が高いところから低いところに流れ込むように、
濃いニュアンスを持つものには伝染力があるように思います。
歌の世界でも、演歌のこぶしやJ-Popのちりめんビブラートってどっぷりハマると癖になってなかなか抜け出せなくなる。ブルースのクォータートーンといわれる、半音以下の微妙なピッチ変化もそうかも。
だけど、こと弦楽器に関しては、ニュアンス伝染ってあながち悪くないなぁと最近思いはじめました。
同じ弦楽器でも、違う種類の楽器を弾くと(もしくは違う奏法にチャレンジすると)ニュアンス伝染が起こって、違う表現力のひきだしが加わる気がします。
例えば、
- エレキギター弾きがアコースティックギターにのめりこむ
- ガラス瓶などを使ったスライド奏法にチャレンジ
- エレキベース弾きがウッドベース/フレットレスベースにトライ
- ヴァイオリンやチェロを始めてみました!
などなど。
弦楽器って、そういうニュアンスに非常に敏感に反応するようで、微妙な押弦のタッチの違い、ビブラートの変化、フレージングの指の角度変化のようなささいなことが、トーンに大きな変化を与えるのです。
いつものフレーズを弾いても、何かひと味違う。
楽譜には表しにくい、深い何かが。
加えて、違う音楽のルーツや歴史、音階やリズムに接することで音の使い方も発想が変わってくる。
そういったもろもろを飲み込み、消化しながら「自分の型」を変化させることで、マンネリから抜け出し、自分の音をプレイヤーとして成長させることができる気がします。
興味がないものをしぶしぶやってニュアンス伝染しちゃうのは嫌だけど、好きなものなら大歓迎だよね。
昔から文明・文化の大きな飛躍は異質なもの同士がぶつかりあったときに起こりやすいといわれているけど、なにかそれに近いものがあるかも。
そんな僕がニュアンス伝染されたい楽器。
ズバリ 津軽三味線!
この間、ちょっとだけ弾かせてもらったら、妙にしっくり。
バチのアップダウンストロークが生み出すダイナミック&パーカッシブなサウンドと強く太く温かい音色。
どこかテキサススタイルのブルースギターに似ている。
いつの日か、しっかりやってみたいなぁ。
そのうち、そのうち。
K