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ただがむしゃらに走り続けてきた10年Vol.6~困惑~


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2002年フランスワールドカップが幕を開けるころ、

俺たちの音楽は舵を失いつつあった。




「しんちゃん。ニルヴァーナって知ってる?」
YOU平が徐に俺に聞いてきた。

「もちろん!高校生の頃、よく聴いてた!かっこいいよね。」

「めちゃめちゃかっこいい。俺、今、完全にはまっちゃってるわ。」


その頃から、YOU平のギターの音づくりが変わり始めた。

マーシャルのギターアンプを限界まで歪ませ、リアのピックアップで
かき鳴らすYOU平のサウンドは、とても心地よいとはいえない
研ぎ澄まされた鋭利な音で、突き刺さるような痛みを伴って
聴く者の心に響いた。


いわゆる爆音だった。

それゆえ、そういう音を好むリスナーにはたまらなく刺激的で、
反対に、受け付けない人には苦痛以外の何物でもなかったと思う。

ステージングも変わり始めた。

すこし不機嫌に見える顔つきで演奏することが多くなった。
しかし、決して人を不快にさせない不思議な魅力をYOU平は兼ね備えていた。

あとでライブの映像を見たりすると、そこには
とんでもなくかっこいい「YOU平」の姿が確立していた。

(自分のスタイルを見つけたんだな。)

あくなき自分への探求心。

19歳からビジュアル系を飛び出した少年は、
ありとあらゆる音楽に触れ、
22歳にして「カート」と出会い、そこに自分をリンクさせ
自分のスタイルを築き上げた。

アーティストとして本当にYOU平を尊敬する。





YOU平の爆音ギターに伴って、アツシのベースも勢いを増していった。

より太く、より大きい音を出すために、4弦ベースに5弦ベース用の
弦を張ることもあった。

そして、彼もまた、自分のスタイルを確立していく。

極限までベースの位置をさげ、とんでもないスラップを
軽々と演奏し、ステージでは所狭しと動き回る。

相当な練習を積まないと絶対にできない荒業だ。


のりちゃんのドラムも激しさを増していく。

キックしかり、スネアしかり。

特にリムショットは、「伝家の宝刀」と呼ばれるほど
切れ味のよい飛んでいくような音を叩き出した。

そして自分には使いこなせないからと、
ハイタムとロータムをドラムセットから
取り外し、スネア、フロア、キックのみの
ドラムスタイルを確立した。

それが、ものすごく似合っていたし、何よりかっこよかった。


そんな爆音テイストなロックに乗せるボーカルラインは、
常に張り裂けんばかりのシャウトぶりで、
俺の喉は、一時ポリープができそうになったほどだ。







「みんなで作る、みんなでアレンジする」


この一見、理想的バンドスタイルには、
「俺」という大きな落とし穴があった。


歌を届けることを二の次にしてしまったことだ。


「歌」「歌詞」「言葉」ではなく、

「音」「サウンド」「曲調」「雰囲気」を重視してしまったことだ。


意図的ではなく、無意識にそうなってしまったのは、
当時の俺の「歌詞」に対する拘りの無さに原因があったと思う。

「歌詞」がどうでもよかったわけではなかった。

ただ、楽曲が最初に作られた段階で、その楽曲に合う「歌詞」を
当時の俺には本心で書き上げる事が出来なかったのだ。

当時も今も、歌いたいことの根底にあるものは、
「愛」についてだ。

むかしからそうだった。

「世の中」や、「若い奴ら」とか、「くそくらえだぜ」とか、
本当に思っていない事柄を歌にしていたから、
届けようとするパワーが、メンバーに負けていたのだ。


アイデンティティの欠落というか、むしろそれに悩む時期が
俺の人生の中では少なすぎたのかも知れない。


「自分を持っていない」という自己嫌悪に陥る日々が続いた。



今考えれば、爆音の中で、「愛」を絶叫していればよかっただけなのかも知れない。



だが、当時の俺にはそれが出来なかった。

それは、同時にメンバーに対して本気で向き合っていなかったという
失礼な行為にもとることができるだろう。

本気で向き合えるほど、「自分」を持っていなかったからだ。




そんな時期に、俺は、

恐ろしいほど「自分」というものを持った女性に出会った。


ワールドカップも間もなく開催されようかという梅雨の頃だった。






そして、俺はその女性に恋をした。




つづく。
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