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ただがむしゃらに走り続けてきた10年Vol.11~六本木マジック~

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「ねぇ、ねぇ。」

コンビニの外でパンをかっ食らいながらYOU平が切り出した。

「最強の3文字。。。言っていい???」

「ん?なになに?」

俺、アツシ、のりちゃんはYOU平に注目した。



「か・え・る??」


間といい、YOU平独特の面白いことを言うときの表情といい、
帰るかパンを食うかの選択で後者を選びムシャムシャと
ほおばりながら言い放ったその一言で、

俺たち4人は大爆笑した。


同時にとてもうれしかった。

(そうだよ。帰ろうよ。おうちに帰ろうよ。帰ったっていいんだ。)

「うん!帰ろう!帰ろうぜ!」


俺たち4人はそれぞれ、なんとかして帰路についた。



新宿での営業を終え、そのCDの売り上げのすべてを
映像会社に持っていった。

1000円札の大量の札束。

会社の社長さんをはじめ、スタッフのみんなの驚いた表情。


(どうだ!まいったか!)

心の中でそうつぶやいた。

「今日から六本木に行ってみようと思います。」

六本木で終わらせますよといわんばかりに、
残りのCDをすべて紙袋に詰め込み、
俺たちは夜の六本木へ会社のある赤坂から歩いて向かった。


六本木。


東京タワー、きらめくネオンと行きかう人々。

いわゆる大都会「東京」だ。


目の前に立ちはだかるように聳え立つ東京タワーは、
俺たちをあざ笑うかのように不気味に光っていた。


「さぁ、やるしかねぇな。どこから行く?」

「どこでもいいさ。片っ端から行こうぜ。」


新宿の街で鍛えられた俺たちには、もはや怖いものなどなかった。


一軒一軒ドアをあけ、あの営業スタイルで確実にCDを売っていく俺たち。

やはり温かい人たちばかりで、順調な滑り出しだった。

夜10時から明け方まで。この限られた時間の中で、出来るだけ
たくさんのお店を回るためには、一つのお店に長居は禁物だった。


とあるお店の外国人ホステスさんはすごかった。

「ハーイ。イラッシャーイ。」
「あ、どうも。僕たちは~中略~。」(いつもの営業トーク)
「オッケー!オッケー!ヨ。ホラ、ハインナサイヨー。」

店内に入る俺たち。

「ハイ。スワンナサイヨー。」
「あ、いえ、大丈夫です。」
「イイカラ、スワンナサイヨー。」
満面の笑みで席に座らせようとするホステスさん。

「あ、ありがとうございます。でも、大丈夫です。」

「ホラ。ハイ。ノミナサイヨー。」

水割りセットをもってくるホステスさん。

「あ、あの、呑みに来たわけじゃなくて、、、。」
「ダイジョウブ。ダイジョウブヨー。」
と言いながら水割りを作り出す。

「ホラ。スワンナサイヨー。」
「ホラ。アンタモ、アンタモ。スワンナサイヨー。」

相変わらず満面の笑みだ。

「ああああ、で、で、でも、いや、ほんとに、、、。」

「イイカラ。ス・ワ・ン・ナ・サ・イ・ヨー。」


ホステスさんに手を引っ張られ、店のソファに腰をおろす俺たち。

「ホラ。ハイ。ノミナサイヨー。ノンデイイノヨー。」

水割りを差し出してくれるホステスさん。

「ハイ。コレノンデ、ガンバルノヨー。アンタタチ。」

その力強さとプロ根性。

あのホステスさんの

「スワンナサイヨー。」

は、100人いたら100人確実に座らされる成功率100%の
すごい「スワンナサイヨー」だ。


結局、タダでお酒を飲ませてくれて、オーナーにCDも買うように
言ってくれて、そのあとすぐ帰らせてくれて、
とってもいい人だったんだけど、

座ったら帰れないような恐怖を味わったのは事実で、
久しぶりにちょっと動揺したのを覚えている。


一日目に90枚近く売り上げ、残り200枚を切った。

六本木営業2日目に突入した。

ここまできたら、最後まで売ってやるという意地と、
こんなことをしていて本当にいいのだろうかという思いとが
激しくぶつかる中、ある人物に出会った。

営業も終盤を迎え、あと残り100枚ほどになった頃だったろうか。

あるお店でいつものように営業をさせてもらったときのこと。

「このお店には、業界の人がよくあそびに来てくれるからさぁ。」
「おお。本当ですか!」
「うん。実は、今日も来てくれてるのよ。」
「ほら、あの人。」

と、店長が小声で俺たちに教えてくれる。

「あの奥のソファに座っている人ね、彼ね、レコード会社の人なのよ。」


「おおお!マジっすかー!」

「ちょっと頑張ってみたら!」

店長は、そういうと俺たちを店内に入れてくれて営業をさせてくれた。

いつものようにラジカセで1曲聴いてもらう運びになった。

「ねぇ、ねぇ。せっかくだから歌ってよ。」

店にいた女のお客さんが俺に言ってきた。

「あ、はい!では、歌わさせてもらいますね。」

俺は、ラジカセに合わせて、カラオケマイクで
ライブハウスばりのアクションをつけて歌って見せた。

ある程度お客は盛り上がり、何人かの人がCDを買ってくれて、
丁重にお礼を言って、お店をそろそろ出ようとしたとき、


「はい!no_NAME集合!おら!集合!ちょっと外に出ろ!」


その声は、まさに店の奥のソファに座って一部始終を見ていた
あのレコード会社の人物だった。

心配そうな顔つきで見つめる店長。

「すんません、ちょっとこいつらに話があるんで。」

そういって店の外へ俺たち4人を連れ出すと、


「おい!おまえら。なにやってんだ?」

「あ、あの、CDの営業で、、、あの、1ヶ月で1000枚を、」

「んなこたぁどうでもいいんだよ!なにやってんだよ。おう?」

無言になる俺たち。

「おまえらよう。あんなんで伝わるのかよ。おまえらのやりたいこと
ってちがうだろうがよ。おい!いいからよ!俺に殴りかかっても
いいからよ。殴りたきゃ殴れよ。俺はこういうもんだ。」

そういうと、その人物は俺たち一人一人に名刺を差し出した。

そこには、
大手レコード会社の名前が書いてあった。

「この名刺は本物だし、文句があればいつでも乗り込んできてもいいし、今俺を殴りたきゃ殴ればいい。こんなことやらされてるんだったら
今すぐやめちまえ!お前らロックやってんだろうが。バンドやってんだろうが。
店に入ってきてラジカセ流してそれで歌ってよ。伝わんのかよ。おう?」

「くやしかったら、有名になれよ。そしてもし会うことがあったら
俺をこき使ってもいいし、はなっから相手にしなくてもいいし、
なんでもいいよ。とにかく、違うだろうがよ。」


大分お酒が入っていたかも知れないが、
俺たち4人に対して、たった一人で喧嘩をする覚悟で怒鳴りだした
この人物に、当時の俺たちは腹が煮え繰り返る程の怒りとくやしさ
(そんなことはお前に言われなくてもわかっているよ)という
思いで、ひどく落ち込んでしまった。

同時に、やっぱりライブがしたいという思いが
強くこみ上げてきた。


こんなことは本当はしたくない。
俺たちはライブで魅力を出して本当に気に入ってくれた
人たちにCDを届けたいんだ。
今、買ってくれている人たちのほとんどが、「情」で買ってくれているのだ。
こんなのは、間違っている。
こんな押し売りは、もうやめよう。
1ヶ月で1000枚売れたら、どうなると言うんだ。

どうにもならないだろう。

もうやめだ。

ライブをやるんだ。

今までの何かにとりつかれたような意地と
緊張感がプツリと音を立てて切れた。


その日以来、俺たちはラジカセを持って街を練り歩くことを
やめた。

1ヶ月で1000枚完売という目標達成まであと少しのところで。



そして、強引にすぐにライブが出来るところを探し、
たまたま見つけたライブハウスの掲示板での
出演バンド急募の書き込みに飛びついた。


「ライブを入れたから。5日後だけど。」
「おお。やろう。やろう。」


俺は今でも、六本木で会ったあのレコード会社の人物の
名刺を大切に保管している。
別に連絡してどうこうしようとかは思わないが、
何か大切なことを忘れそうになったときに、その名刺を
たまに眺めるのだ。

そしていつかまた、あの人物に会うことが出来たとき、
「あの時は、あなたのことをクソヤローだと思ったけど、
あなたがいなければ今の僕らはいないですね。
ありがとうございました。」

と言って酒を呑めればいいなと思うのだ。



2004年1月下旬。

強引にブッキングした久しぶりのライブ。


そこで俺たちは奇跡を起こした。


つづく。
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